校長室より

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令和5年度入学式式辞

式 辞

柔らかな春の日差しの下、暖かい風が頬を撫で、花が咲き誇り、鳥が高らかに歌っています。本日ここに埼玉県立桶川高等学校第52回入学式を挙行できますことは、本校にとりましてこの上ない慶びであり、心から感謝を申し上げます。

ただいま入学を…

 

…許可されました、280名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。教職員及び在校生を代表して皆さんの入学を心から歓迎いたします。これまでに皆さんを慈しみ育んできた保護者の皆様を始め、関わりのある全ての皆様が喜びの気持ち、お祝いの心でこの時間を過ごされていることと思います。さて、桶川高校があるこの場所には、現在本校の北側に位置する加納中学校が元々あったそうです。昭和時代の中頃、今から50年余り前までたいていの町には小中学校しかなく、そしてそれは地域のまさに中心でありました。いよいよ県立高校ができる、となった時、地元の皆様は、地域の一等地、坂田台のこの地を譲ってくださったのです。高校教育への期待はそれほど大きかったと言うことを示しています。また本校の校章を既に目にしてお気づきでしょう。桶川市の市章と基本デザインが全く同じです。市章を新しいデザインに改めた自治体も多い昨今、校章と市章が瓜二つという例は少なかろうと思います。このことからも桶川高校が地域の期待を背負って地域と共にある学校だと言えましょう。本校は昭和47年に開校し、一昨年創立50周年という節目を越えました。皆さんは第52期生となる訳です。3年間、立派に高校生活を送り、地域の発展を支える有為な人材となることを願っています。

ところで、社会は、コロナの影響による変化やAIに代表される科学技術の発達などにより急速に変化しつつあります。加えて、大きな地震や台風など、自然災害、不安定な国際関係など、先の見通しが立ちにくくなっています。このような世の中を皆さんは生き抜いていくことになります。どんな力が必要でしょうか。

いい高校生、と言うと、「勉強ができる人」「スポーツが得意な人」などを思い浮かべるでしょう。しかし、社会に出たら単に勉強や運動ができるだけではうまくいきません。社会では基礎的な学力や専門的な知識を持っていることはもちろん、それらをうまく活用していく力も必要だと言われています。経済産業省ではそれを社会人基礎力と呼び、具体的に3つの能力を挙げています。

1つ目は一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力です。高校生活の場面として、例えば部活動で、試合や大会で負けた時を想像してみましょう。ただやる気をなくすのではなく、次の試合で勝つために自ら進んで練習メニューを改善し、周りの部員を巻き込んで粘り強く努力していく。そんな人は、社会でも失敗を乗り越えて活躍できそうです。

2つ目は目の前のことに疑問を持ち考え抜く力です。この力のある人は、例えば部活のしきたりに疑問があるとき、ただ従うあるいは文句を言ってみるだけではないでしょう。そのしきたりにどんな問題点があり、どう変えると良いのかを考え、部員や顧問に働きかけることができます。社会でも上司の言いなりに動くだけでなく、自分で問題点を見つけて十分に考え改善し、より良い職場に変えていけるでしょう。

3つ目はいろいろな個性を持つ人たちと共に、目標に向けて協力する力です。この力を持っていれば、文化祭でクラス全員で出し物をする時、好みや考え方が人によってバラバラでも自分の意見をきちんと伝え、人の意見にも耳を傾けながらまとめ上げて良い出し物が作れるでしょう。社会でも1つの目標に向けてチームで協調しながら取り組む仕事が増えています。

保護者の皆様、お子様のご入学、誠におめでとうございます。これまでお子様のことを大切に深い愛情を持って育ててこられたことと存じます。今日からは本校生徒としてお預かりいたしますが、ご期待に応えられるよう一人ひとりを大切にし、学びと成長を支えてまいります。本校の目指す学校像は、「地域の期待に応える学校」です。地域の存在、期待を常に念頭に置き、学校・家庭・地域の三者連携を密にし、より良い教育活動を展開すべく努めますので、ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

お子様の高校生活が健康で実り多く、充実した日々でありますよう、心から願い式辞といたします。

 令和5年4月10日

埼玉県立桶川高等学校長 小林美奈子 

令和5年度第1学期始業式 校長講話

令和5年度第1学期始業式 校長講話

皆さん、おはようございます。小林美奈子です。今年も桶川高校を教職員や皆さんと一緒に大いに盛り上げていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

今日は3点、お話しします。

1点目、…

…今日午後、本校に、52期生280名の新入生が入学します。ぜひ、よき先輩として、新入生を温かく迎えてあげてください。生徒同士、多様性を尊重してお互いを認め合い、理解し合い、助け合い、支え合う関係を築いてほしいと思います。皆さんの足跡が後輩たちの道標になります。間違いも失敗も、恐れずにどんどんしてください。大事なのはチャレンジすること、そしてそれをみんなで盛り上げ合うことです。

また、コロナによる制限もほとんどなくなり、目の前のことを頑張ることがより一層大事になってきます。高校生の本分、授業には常に全力で取り組んでください。部活動も、ぜひ続けてください。一度辞めてしまったとか、学校外での文化・スポーツ活動をしていないよ、と言う人は、この機会にぜひ何か始めてみましょう。時間をかけて身をもって経験することでしか得られないことがあります。部活動等を通して、ぜひ自分が一番という「好き」や「得意」を育てましょう。

2点目です。自転車での事故やケガに十分気を付けてください。毎年1学期に事故、ケガが集中しています。また、時間帯では朝の登校時に集中しています。誰もが急いでいる上に、交通の集中が激しいです。早めに家を出て、車や歩行者を尊重して丁寧に運転して来てください。学校には自転車の乗り方やマナーの悪さを訴える苦情が、しばしば来ます。大きな事故に巻き込んだり、巻き込まれたりすると、後が想像以上に大変です。交通ルールを守り、命を守るヘルメットをぜひ進んでかぶりましょう。

3点目は、生き方を考える一つの参考にしてほしいと思ってお話しします。自分は何を喜びと感じ、どう生きていきたいか見つけてほしいのです。このお話は、人名などの細かいところは忘れて結構です。聞いて感じることを忘れないでもらえたらと思います。

「ムツゴロウ」の愛称で親しまれ、動物とのふれあいをテーマに多くの文学作品を執筆し、テレビ番組などでも活躍した作家の畑正憲さんが先ごろ亡くなりました。畑さんは30代の時、それまで勤めていた学研という会社を辞めて、北海道の無人島に熊や馬を連れて移住しました。翌年には北海道の浜中町(はまなかちょう)というところに人と動物がともに暮らす「ムツゴロウ動物王国」を作りました。「われら動物みな兄弟」の精神をもって、自身の経験を軸に数々の著作を発表していきました。「ムツゴロウの青春記」をはじめ、人と動物とのふれあいを書き続け、動物文学の第一人者として知られました。また、文筆活動の傍ら、テレビ番組にも出演し、世界各国を旅してさまざまな動物と触れ合う姿が人気を博しました。
「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」という人気番組は2001年まで20年以上続きました。畑さんと関わりのあった人の追悼の言葉を拾ってみます。

北海道旭川市にある「旭山動物園」の坂東元園長は、「人間として動物を客観的に観察するのではなく、自分が動物になったつもりで、動物の感性や能力などを考えるところにとても魅力を感じていました。多くのことを参考にしていました。」

畑さんの「ムツゴロウ動物王国」の元従業員、石川利昭さんは「畑さんはアイデアマンで、科学者で、そして愛にあふれた人でした。ある時、保護した赤ちゃんアザラシがミルクを飲まなかったのですが、畑さんはミルクをシャーベット状にして飲ませるアイデアを出したことで、しっかり成長させて海に帰すことができました。」

お魚博士さかなクンは、「ムツゴロウさんのテレビ番組や本で育ちました。命の輝きや尊さを学び、自然の中の仲間たちと出会いから感動を得られることを学びました。」

私たちは、畑さんの一途さをお手本にできるのではないでしょうか。好きなこと、人に負けないことを人生の真ん中に置いて生きていくこと。ブレずに真剣に、一つことに取り組み、高めてください。心の奥底から湧き上がるあるいは今はそこに眠っている、好きなことを通して得る喜びの正体を突き止めてください。この上なく喜びを感じる、というミッションが誰でも一つはあると思います。高校生のうちにそこに近づいてくれることを願っています。

ところで、余談ですが、畑さんのムツゴロウという愛称ですが、出版社が畑正憲さんの活動内容とは関係なくつけたあだ名だと言います。ムツゴロウってそもそもなんだか知っていますか。佐賀県の有明海の干潟だけに住む珍しい魚の名前です。鰓呼吸と皮膚呼吸ができ、胸鰭で這うように歩いたり飛び跳ねたりして動く変わった魚らしいですよ。図らずも自分のあだ名になった魚の住処である干潟を、ロケで訪れた畑さんは魚のムツゴロウのように干潟の泥に自ら全身を埋め大いに楽しんで、地元の人を感動させたそうです。むつかけ釣りという、ムツゴロウ釣りの名人の方が曰く、「こんなに干潟を楽しんでくれる人がいるんだと驚きました。50年以上、干潟に携わっていますが、畑さんの様子を見たら自分の干潟への思いは足元にも及ばないなと感じました。」自然や生き物を一途な気持ちで一生愛し続けた人でした。

最後に、イギリス国王を70年以上務め、昨年9月に96歳で亡くなった、のエリザベス女王の信念と願いをみなさんに共有します。欧州連合(EU)離脱を巡り英国内の溝が深まった際、女王が国民向けに発したメッセージです。「互いを攻撃せず、異なる視点を尊重すること。一緒に共通点を見つけ、全体像を見失わないこと。私にとって色あせない手法であり、みなさんにもおすすめします」。

それでは、元気に充実した令和5年度の高校生活を送りましょう。