校長室より

令和5年度卒業証書授与式式辞

暦の上では春となって久しくも、その春が行きつ戻りつしているかのようで、時に寒さや雪に見舞われます。…

…それでも春の歩み着実で、近隣の梅の花など早春の花は、見頃を迎えて咲き誇っています。

本日この佳き日に、桶川市教育委員会教育長職務代理者水村実男様をはじめ、ご来賓の皆さま、保護者の皆様のご臨席の下、令和五年度埼玉県立桶川高等学校第五十回卒業証書授与式を挙行できますことは、卒業生はもとより、私達教職員にとりましても、この上ない慶びであり、心から感謝申し上げます。

保護者の皆様もこの喜びはひとしおかと存じます。心からお祝いを申し上げます。卒業生の皆さんの高校生活は、新型コロナウイルスの影響を大きく受けました。特に二年生までは、行動制限も多く、コロナ禍前の高校生活を知る私たち年長者の目には、総じて気の毒に写っていました。しかしながら、あなた方にとっては、前はどうだったかなどという尺度の持ち合わせがあるはずもなく、桶高でのこの三年間こそが高校生活の定義でした。あなた方は、一つ一つの経験のその時その時を大事にし、楽しみながら、精いっぱい過ごしてくれました。

部活動でも、先輩の背中を追い、驚くほどに成長し、そして後輩の憧れになりました。この三年間を通じて、たくさんの思い出ができました。高校生活最後を締めくくる今日の卒業式を、胸を張って大きく息を吸って迎えられたことを嬉しく思います。また、本日、ここで一緒に祝うことはできなくても

皆さんの卒業を心から喜んでいる人がいます。後輩の一年生たち、小中学校の先生やお世話になった方々、ほかにもまだまだ顔が浮かびますね。心は一つです。気持ちを想像し、卒業式を味わってください。只今卒業証書を授与しました二百四十九名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。

皆さんの努力と保護者の皆様や周囲の方の支援が実を結び、今日の卒業につながりました。これからは、それぞれの道を、決意をもって前に進んでください。人生の新たな門出を迎えた皆さんに、正直に生き、人に信頼される幸せな人生を送ってほしいと考え、一つ、お話をします。

昔、十九世紀のアメリカで、ある二十歳過ぎの貧しい家の出の若者が店員として働いていました。ある日、そろそろ閉店という頃合い、手元の現金を計算すると、何度計算してもほんの少し多く残っていました。今と貨幣の価値が違いますし、諸説あるので大体になりますが、ざっと三千円の買い物で十円程度と思ってください。よくよく思い出してみると布を買った常連の女性客にその分だけ多くもらってしまったことに思い至りました。彼は、すぐに店仕舞いをし、夜道を二時間ほど歩いて、女性の家までお金を返しに行ったといいます。そして、彼は、ごまかしも、嘘も、言い訳も言わず、素直に心からお詫びをしてお金を返しました。感激した女性から若い店員の彼が得たものは、「正直者」という何物にも代えがたい評価でした。その後、彼はますます多くの人に信頼されるようになり、およそ三十年後、彼はアメリカ合衆国第十六代大統領になりました。歴代大統領の中で最も有名で偉大な大統領の一人です。彼の名は、エイブラハム・リンカーン。どんな人にも誠実に対応し、正直さを貫くことで、他人の信頼を得て、社会的な成功も収めました。人から信頼されることは、人生における心の豊かさ、幸せの実感にもつながるでしょう。ぜひ皆さんも正直に、誠実に、今後の人生を歩んで行ってください。

どうか皆さんの前途が、心身ともに健康で、充実したものでありますよう心から願い、式辞といたします。

 令和六年三月八日
      埼玉県立桶川高等学校長  小林 美奈子