第1学期終業式講話
皆さん、おはようございます。今日で学校は一区切りとなり、夏休みを迎えます。1学期の振り返りと1つお話をします。
まず、…
…新型コロナウイルスは、ゴールデンウィーク明けから感染症法上の5類に移行され、行動制限がなくなりました。しかしながら、新規感染者数は今も増加傾向です。部屋の換気や個人でできる感染対策は引き続き行ってください。油断は禁物です。文化祭準備も気をつけて行ってください。
学習面では、授業にしっかり、真剣に取り組み、良く学ぶことができました。成績会議で報告された、成績優秀の生徒は、1年生14名、2年生31名、3年生31名でした。はじめて成績優良者のリストに名を連ねることになった3年生の生徒もいると聞きました。よく頑張りました。ここに入れなかった人は次に期待しています。よかった人も、これからの人も経験を2学期以降につなげてほしいと思います。
1学期の間に自転車で転倒や事故で怪我をした件数は、昨年度より減りました。みなさんが気をつけてくれているのだと思います。しかし、マナーの悪さに対する苦情も時々入ってきています。交通社会の一員として、周囲に対する思いやりの心を持って、ヘルメットをかぶって自転車に乗ってください。
さて、昨日は避難訓練を行い、関東大震災と防災についてお話をしました。今日は、関東大震災の後に起きたことをもとに、大災害の後に気をつけたいことなどをお話しします。
災害が起きると、日常が突然失われて、人々が不安定になり、不安がどんどん増します。略奪や性暴力などの不法行為が発生しがちになるのですが、根拠のない「流言」も広まります。なかでも「被災地で外国人の犯罪が増えている」という内容は典型的な災害流言の一つです。今もほぼ災害のたびに確認され、流言を耳にした人のうち8割を超える人が信じて、そして「危険を知らせなくては」との善意でさらに広めてしまうという調査結果があります。大事なことは、「災害の後は流言が広がる、自分の目で見ていないことはすぐに信じてはならない」ということです。
1923年の関東大震災では、「朝鮮人が略奪や放火をした、井戸に毒を入れた」などの流言が広まり、数千人に上る朝鮮人や中国人などが殺害されました。埼玉県でも200人以上の朝鮮人が殺されたことが分かっています。その頃はまだ韓国と北朝鮮に分かれていなくて、朝鮮半島で一つの国でしたので、朝鮮人という呼び方です。
流言を聞いて信じて、日本刀や竹槍、猟銃などで武装した自警団(治安維持のために住民が結成した組織)が、関東一円で3千7百もつくられ、罪もない朝鮮人を次々と襲ったといいます。そんな中、正義を貫いた横浜鶴見警察署の大川常吉署長の逸話が伝えられていますのでご紹介します。<(参考)防災システム研究所ウェブサイト>
『警察史』から抜粋すると(朗読します)、『二日夕、自警団員が四人の男を朝鮮人だと鶴見署に突き出し、「持っている瓶に毒が入っている。たたき殺せ」と騒いだ。当時、46歳の大川署長は「そんなら諸君の前で飲んで見せよう」と瓶の中身を飲み、暴徒を納得させた。翌日、状況はさらに緊迫。大川署長は多数の朝鮮人らを鶴見署に保護する。群集約千人が鶴見警察署を取り囲み、「朝鮮人を殺せ」と激高。大川署長は「朝鮮人たちに手を下すなら下してみよ、憚(はばか)りながら大川常吉が引き受ける、この大川から先に片付けた上にしろ、われわれ署員の腕の続く限りは、一人だって君たちの手に渡さない!」と一喝。体を張っての説得に群集の興奮もようやく収まったかに見えた。しかし、それでも収まらない群集の中から代表者数名が大川に言った「もし、警察が管理できずに朝鮮人が逃げた場合、どう責任をとるのか」と。すると大川は「その場合は切腹して詫びる」と答えた。そこまで言うならととうとう群衆は去って行った。保護された人は朝鮮人220人・中国人70人ら、計300人を超えた。9月9日鶴見警察署から横浜港に停泊中の崋山丸に身柄を移しその後海軍が引き受けて保護した。保護された朝鮮人のうち225名はその後も大川署長の恩に報いるべく震災復興に従事したという。
大川常吉氏は後年「警察官は人を守るのが仕事、当然の職務を遂行しただけ」と語ったと伝えられているが、あの当時、あの状況下で、多数の暴民に取り囲まれながら、しかも署員はわずか30名で多数の朝鮮人らを守り抜いたのは並大抵の胆力と度量ではなかった。覚悟を決め・死を賭して(命を懸けて)の大川常吉氏の行動こそ日本人としての誇りでありヒューマニズムの原点である。
いかがでしょうか。まとめます。大事なことふたつです。ひとつ、災害の後は、混乱に乗じて、流言が流行り、略奪や性暴力などの犯罪が必ず起こります。流言は、信じない、広めないことが大事です。自分で直接確認したことで判断しましょう。ふたつ、正義を貫きましょう。大川常吉氏の行動を一つのお手本として、小さなことから彼に倣いましょう。
最後に、夏休みとその先に向けてです。夏休みは、長そうで短いです。特に、3年生は第一希望進路実現に向けて、非常に大事な時期です。1,2年生の皆さんも目標を持って充実した夏休みを過ごしてください。怠け心に負けないように頑張る、克服することこそが成長です。そこはあなた自身だけが頼りです。
何か悩みがあるときは、一人に悩まないで、話せる先生に連絡してください。学校外の相談先もたくさんありますので、活用してください。それでは、9月1日に元気な皆さんと会えるのを楽しみにしています。
令和5年7月20日(木) 体育館アリーナにて